憲法

憲法重要判例~適正手続に関する判例~

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第三者所有物没収事件(最大判昭37.11.28)

結論:第三者の所有物を没収するのは憲法違反

第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない。

理由:第三者の所有物を没収がは、なぜ憲法違反?

なぜなら、憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また憲法31条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定している。

第三者の所有物の没収は、所有物を没収せられる第三者において、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならない。

憲法第29条1項

財産権は、これを侵してはならない。

憲法第31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。


川崎民商事件(最大判昭47.11.22)

理由:収税官吏の検査が、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつくとは言えない

収税官吏の検査は、もっぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であって、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない。

また、収税官吏の検査で、結果過少申告の事実が明らかとなり、ひいて所得税逋脱の事実の発覚(刑事責任の発生)にもつながるという可能性もある。しかし、収税官吏の検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。

さらに、この場合の強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、所得税法70条所定の刑罰を加えることによって、間接的心理的に検査の受忍を強制しようとするものであり、かつ、所得税法上の刑罰が行政上の義務違反に対する制裁として必ずしも軽微なものとはいえないにしても、……直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたい

憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨である。

しかし当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に憲法35条1項による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。

結論:旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、裁判官の発する令状がなくても、合憲である

しかしながら総合して判断すれば、旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、これを憲法35条の法意に反するものとすることはできない。

憲法35条

何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。


成田新法事件(最判平4.7.1)

憲法31条の定める法定手続の保障は、行政手続にも及ぶのか

憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものである。しかし行政手続についても、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に憲法31条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。

行政手続において、憲法31条の定める法定手続の保障は、常に及ぶものではない

しかしながら、憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。


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