民法

背信的悪意者からの転得者の地位(最判平8.10.29)

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■事案の概要

B市は、Aの所有する甲土地を買い受け、これを市道として整備し、一般市民の利用に供した。

甲土地が市道として利用されてから10年以上の後、Cは、甲土地について所有権移転登記がないことを奇貨として、市道を廃して自己の利益を図るためにAから二重に甲土地を買い受け、登記を経由した。

甲土地は、Cの関連会社を転々とした後、Dがこれを買い受け、登記を経由した。

Bは、Dに対して所有権に基づく真正な登記名義回復を目的とする所有権移転登記を請求した。

原審は、背信的悪意者からの転得者も第三者に対抗することができないとして、Bが勝訴。

■問題の所在


背信的悪意者から不動産を譲り受けて登記を経由した転得者は、第三者に対して所有権の取得を対抗することができるか。

民法で言うところの『悪意』とは、「ある事実を知っていること」であり、日常用語の『悪意』とは意味合いが異なります。本事例で言えば、甲と土地の譲渡人であるCが不実の登記名義人であること(つまりが見せかけの甲土地所有者であること)を「知らないこと」である。
背信的悪意者とは、「悪意の者のうち、信義則に反する(相手の信頼を著しく裏切る)ような悪質な者」のことである。
不動産が2重譲渡された場合、民法177条によって、登記の先後で権利関係を決定するのが基本であるが、背信的悪意者は、「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであり、民法177条にいう第三者に当たらないものと解されている。

■結論


背信的悪意者から不動産を譲り受けて登記を経由した転得者は、転得者自身が背信的悪意と評価されるのでない限り、第三者に対して所有権の取得を対抗することができる。

Dが背信的悪意者であるかについて審理を要するとして破棄差戻し。


■判旨


本事例は、所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、Cが当該不動産をAから二重に買い受け、更にCから転得者Dが買い受けて登記を完了した。


この場合、たとえCが背信的悪意者に当たるとしても、Dは、Bに対する関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができるものと解するのが相当である。


Cは背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらない。
この場合、Cが登記を経由した権利をCに対抗することができなく、Bは登記なくして所有権取得をCに対抗することができる。
このことはBC間の売買自体の無効を来すものではない。

したがって、Dは無権利者から当該不動産を買い受けたことにはならない。

また、背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177条の「第三者」から排除される理由は、第一譲受人(B)の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者(C)が登記を経ていない第一譲受人(B)に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにある。

登記を経由した者がこの法理によって民法177条の「第三者」から排除されるかどうかは、その者と譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである。

民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
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