民法

物権法定主義

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民法第175条(物権の創設) 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。


物権は、民法をはじめとする法律で定められたもの以外は、当事者が合意で創設することかできない。これを物権法定主義という。

民法の大原則である契約自由の原則により、当事者間の合意で契約の内容は自由に定めることができることとされている。

法律で定められたもの以外は、当事者が合意で物権を創設できない物権法定主義は、契約自由の原則の例外と言うこともできる。

物権法定主義をさらに細かく見ると、以下の2つの意味をもつ。
①民法その他の法律に定めている以外の新しい種類の物権を作ることはできない。
②法津の定める種類の物権につき、それらの規定と違った内容を与えてはならない。

歴史的に考えると、封建制度の複雑な物権を整理して、資本主義取引に適するよ
うに自由なな所有権を中心とする物権関係を確立することが物権法定主義の経緯でもあった。

また、物権の種類を限定することにより公示が実に行われるようにして、取引の安全を図ることに資するものである。

■占有権と本権
有権は、占有しているという事実状態に基づいて認められる権利である。これに対し、その他の物権は、物の占有とは無関係に、物の支配の権原を本体とする権利であり。占有権に対比して本権と呼ばれる。


■所有権と制限物権
所有権は、物を全面的ないし包括的に支配しうる権利である。これに対し、制限物権は、所有権の部分的権能(使用収益権能または交価値支配権能)で構成される。


つまり制限物権とは、物の全面的・包括的な支配権である所有権の、一部の機能のみで構成された権利であるとも言える。

■用益物権と担保物権
用益物権は、物の使用収益権能を内容とする物権であるしこれに対し、担保物権は、債権担保を目的として、物の交換価値支配権能を内容とする。

例えば、1000万円の価値を有する土地があったとして、実際にその土地を使用する場合は用益物権が必要であり、実際には使用しなくてもその土地が持つ経済的な価値である1000万円に対して権利行使できるのが、担保物権である。

■慣習法上の物権
慣習法上の物権には、①民法典ができる以前から存在していたものと、②民法典ができた後、取引の必要から商慣習として発達したものがある。前者の例が、水利権(大判大14.12.11)や温泉専用権(鷹の湯温泉事件・大判昭918であり、後者の例が、譲渡担保権である。

■慣習法上の物権と諸規との関係
物権法定主義を採用するわが民法下において、温泉権や譲渡担保権といった慣習上の物権を承認できるかについて、学説は、物権法定主義の趣旨を害さなければ、慣習法上の物件も認めてよいとする。


ただ、旧習法上の物権を承認しようとする場合、次の2つの規制との関係が問題となる。

①法例2条:「法令ノ規定ニ依リテ認メタル」慣習、及び「法令ニ規定ナキ事項ニ関スル」慣習を、法として承認する

②民法施行法35条:「慣習上物権ト認メタル権利ニシテ民法施行前ニ発生シタルモノト雖モ具施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムルモノニ非サレハ物権タル効力ヲ有セス」

■法例2条と175条の関係
この関係については以下の三説がある。
①175条や法例2条を無視すべきものとする説

②175条の「法律」のなかには、法例2条により法律と同一の効力を有するとされる「法令ニ規定ナキ事項ニ関スル」慣習法も含まれるとする説
③慣習法は、175条の「法既には含まれないが、法例2条によって物権と認められるとする説

民法施行法35条については、本条は民法施行前の慣習上の物権の整理に関するものであり、それ以後に発生するものまでも否認する赴旨ではないと解するのが一般である。

以上のように、慣習法上の物権は、一応物権的な取扱を受けている。しかし、このことは慣習法上の物権が必すしも民法上の「物権」として承認されたということではない。


慣習法上の物権については民法典上の物権に与えられた物権的効力をすべて認める必要はなく、場合に応じて個別的に認めれば足りる例えば、譲渡担保権については優先弁済権を認めれば目的は達成される。

したがって、そのような個別別的効力を有する物権的権利を承認することは、175条に触するものではない。

判例も、かかる権利を「物権的権利」という表現で承認している。

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