私達は、身の回りにあふれているたくさんの物を、生産したり、誰かから買ったり、誰かに売ったり、使ったり、壊したり、捨てたりするといった活動を続けている。
そこで、民法は物権編において、物に対する権利(物権)の種類と内容、さらには、物権の発生・移転・消滅に関するルールを決め、どの物が誰に帰属し、誰がとのように利用、処分できるかという物に関する秩序を定めている。
物権のなかで、最も典型的であり、かつ、物を全面的に支することができる権利である所有権を例にすると、あなたが新しい鞄を購入した場合、あなたにその鞄の所有権が移転したということになる。
物権とは、物を直接的・排他的に支配する権利のことである。
また民法175条で、物権は民法をはしめとする法津で定められたもの以外は、当事者が合意で創設することができない、という物権法定主義を定めている。
物権とは、物を直接的・排他的に支配する権利をいう。物を支配するとは、使用権能・収益権能・処分権能を併せ持つことである。
民法第206条(所有権の内容) 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
つまり、ある物の所有者が、その所有権に基づいて、自由にその物を使ったり(使用)、賃貸して収入を得たり(収益)、売却したり取り壊したり(処分)することができることを「物を支配する」というのである。
物権には、「直接性」と「排他性」がある。
具体的には、地上権設定契約により地上権が設定されたならば、地上権者は地上権そのものに基づいてその土地を使用しうるのであって、地主(所有者)を介して使用するのではないことになる。
排他性とは、ある物権が存在する物の上には、同様の物権は成立しえないということである。
同一物について同一内容の直接的支配権をいくつも認めると自己の意思のみに基づいて支配することは困難となる。
すなわち、物に対する支配状態を侵害する者があれば、それが何人(なんびと)であれ、その侵害行為は違法とされ、法的保護が与えられる。これを、法的保護の絶対性ということがある。
ただし、物権の排他性から取引の安全を確保するために、物権の内容や帰属を外部から認識できるような工夫がなされている。
■物権と債権の対比
物権が物を直接支する権利であるのに対し、債権とは、特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して一定の行為を請求する権利である。
平たく言えば、物権はモノに対する権利であるのに対して、債権は人に対する権利である。
こで物権である地上権(265)と債権である賃借権を比べてみると、いずれも他人の上地を使用させてもらう権利という点において相違はない。
しかし、債権である賃権にあっては、賃貸借契約に基づき賃貸人が賃借人に目的物を使用させる債務を負担し。その債務の履行として賃借人に使用させることになる。
言い換えれば、物権は人と物との関係であり、物権者は目的物を直接支配できるのに対し、債権は人と人との関係であり、債権者が物を支配するとしても、それはあくまで債務者の行為を介した間接的なものにすぎない。
■物権の絶対性
たとえば、賃借権に基づいて上地を占有している場合、第三者から土地の占有を侵害されたときは、債権は債務者を介して目的を達成するものなので、その第三者に対して占有権限を主張して妨害の排除を求めることはできないのが原則である。