民法

建物収去土地明渡請求の相手方(最判平6.2.8)

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■事案の概要
Aは、Bから甲建物を相続し、これをCに売却した。しかし、甲建物の登記はBからAへの相続登記がされたのみであり、登記名義人はAのままである。


一方、Dは、甲建物の敷地である乙土地を競売によって買い受けた。

DがAに対して、建物収去土地明渡請求訴訟を提起したところ、Aは、甲建物の所有権は既にCに移転していることから建物収去土地明渡義務はないと争った。

■問題の所在
他人の土地上の建物の登記を有する者は、土地所有者に対して建物収去土地明渡義務を負うか。

■結論
自己の意思に基づいて登記を経由してこれを保有し続けている場合には、たとえ第三者に建物を譲渡しても建物収去土地明渡義務を免れない。

■判旨

他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとえ建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有者に対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。

なぜまら、建物は土地を離れては存立し得ず、建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから、土地所有者としては、地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって、土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去・土地明渡しを請求する場合の両者の関係は、土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で、あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係である。

さらに、建物所有者は、自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し、これを保有する以上、右土地所有者との関係においては、建物所有権の喪失を主張できないというべきである。

もしこれを、登記に関わりなく建物の「実質的所有者」をもって建物収去・土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば、土地所有者は、その探求の困難を強いられることに
なり、また、相手方において、たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。

他方、建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば、その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず、不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから、登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し、その建物の収去義
務を否定することは、信義にもとり、公平の見地に照らして許されないものといわなければならない。

【補足】

「あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係である」⇒不動産の2重譲渡の場合の権利関係は、登記の有無で決まる。

建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば、その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず」⇒建物の譲渡人は登記義務者となり、登記権利者である真実の所有者の協力を得ることは比較的容易な場合が多い。
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