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常識として知っておきたい保険料の仕組み

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■3つの予定基礎率


生命保険は大数の法則と収支相当の原則によって成り立っていますが、一人ひとりの保険料は以下の3つの予定基礎率によって決まる。

(1)予定死亡率


予定死亡率とは、過去の統計により予測されている、性別・年齢ごとに定められた死亡率のことで、統計には各生命保険会社共通の生保標準生命表が利用されている。

予定死亡率が高くなると保険料は高くなる

(2)予定利率


予定利率とは、加入者から集めた保険料を運用する際に見込んでいる運用利率のことである。保険会社は、保険料から必要な経費を差し引いた上で、将来の保険金支払にあてるための原資(責任準備金)を積み立てるが、運用によって賄える分はここから割り引いている。

予定利率が高くなると、運用によって得られる収益(利息)が多くなるため、加入者から集めるお金は少なくて済むようになり、保険料は安くなる。

(3)予定事業費率

予定事業比率とは、保険会社が運営上必要とする経費の割合のことである。

予定事業費率が高くなると、保険会社がより多くの経費を使うという事で、そのために必要なお金を加入者から集めることになるため保険料は高くなる。

保険も会社が運営している以上、様々な経費が発生するため、それらの経費も保険料から賄われているのである。

■保険料の構成


契約者が支払う保険料は、将来の保険金支払の財源となる純保険料と、保険会社の運営経費として利用される付加保険料によって構成されている。
さらに純保険料は、死亡保険金の支払財源となる死亡保険料と、満期保険金などの支払財源となる生存保険料に分かれており、予定死亡率と予定利率に第づいて計算される。


一方の付加保険料は、予定事業比率に基づいて計算される。

■保険の剰余金と配当金

(1)剰余金


剰余金とは、保険会社が集めたお金と実際に必要となったお金との差異のうち、集めたお金が多かった場合の余剰金のことである。


保険料の計算基礎となる3つの予定基礎率は、あくまでも将来に対する予測に基づき定めた数値であるため、実際の結果との間には誤差が生じる。

保険料の算定は、不足することがないように、通常は余裕を持って定められるため剰余金が発生することが通常である。

剰余金の発生原因を分析すると、以下の3つの利源が考えられる。

・死差益
予定死亡率により見込まれた死亡者数より、実際の死亡者数が少なかった結果、保険金の支払が少なくなることによって生じる利益である。

・利差益
予定利率により見込まれた運用収益より、実際の運用収益が多かった結果生じる利益である。逆に、
予定利率により見込まれた運用収益より、実際の運用収益が少なかった結果生じるマイナスを、逆ザヤと呼ぶ。

・費差益
予定事業費率により見込まれた経費より、実際に使った経費が少なくて済んだ結果生じる利益である。

(2)配当金


予定より多くお金を集めた結果発生した剰余金は、配当金として一定の条件に従って契約者に還元される。共済などの割戻金も同じ性質のものである。

なお、配当金は契約後1年以上経過した保険に対して、経過年数、保険期間などによって公平に割り当てられ、通常は契約後3年目から支払われる。

この配当をどのように扱うかによって、保険商品は以下の3つに分類できる。

・有配当保険
死差益、利差益、費差益のすべてを財源として配当が支払われる保険で、保険金額や保険期間などが同じ条件の商品では保険料が一番高くなる。

・利差配当保険(準有配当保険)
利差益が出た場合にのみ配当を支払う保険である。多くの場合毎年ではなく「5年ごと」などの一定期間を区切って計算される。

・無配当保険
配当を全く支払わない保険で、剰余金を見込まないため、保険金額や保険期間などが同じ条件の商品では保険料が一番安くなる。

※世にある保険商品の中には、配当金が出ることをキャッチフレーズに相場以上の高めの保険料を設定するものもある。また、配当金が出るという心理的な好感を逆手に取った営業も一般的である。しかし、保険で大切なのは、保険料と保障内容とのバランスである。配当はあくまで払った保険料の一部が払い戻されているだけなので、配当金に惑わされずに、真に必要な保険を見極める眼力が重要である。

(3)配当金の受取方法


配当金は以下の受取方法を選ぶことができます。

①積立(据置)方法
配当金をその都度受け取らず、保険会社に積み立てておく方法である。積み立てられた配当金は、保険金や解約返戻金を請求した際に一緒に支払われるが、いつでも引き出すことが可能である。

保険金原資と配当金原資が分離管理されているイメージすると分かりやすい。
②保険金買増方法
配当金を利用して保障額を増額する方法である。この方法を選択した場合、配当金を途中で引き出すことはできない。
似たような金融商品では、投資信託の分配金を再投資する場合がある。

③相殺方法
配当金を保険料に充当する方法であり、その分支払う保険料は安くなる。

④現金支払方法
配当金をその都度現金で受け取る方法である。電子決済化の進んだ現代社会では、現実味が乏しくなっている。

■保険料の払込方法


保険料の払込方法には以下の方法がある。

・月払
毎月の定められた日に保険料を支払う方法。

・半年払、年払
半年または1年に一度、まとめて保険料を支払う方法。月払に比べると保険抖がり引かれる。

・一時払
全保険期間の保険料を契約時にまとめて支払う方法。保険料の総額が最も安くなりますが、保険期間の途中で保険事故が発生した場合でも、支払った保険料は戻ってこない。

・前納払
月払、半年払、年払などで、全期間または一部の期問の保険料を前もって支払うことを前納という。前納した場合、期間に応じて保険料が割り引かれる。また、保険期間の途中で保険事故が発生した場合、未経過部分の保険料があれは戻ってくる。

なお、全保険期間の保険料を前納することを全期前納といい、形の上では一時払と同じであるが、以下の違いがある。

・一時払は、支払った年に全額が保険料に充当される一方、全期前納は、全期前納保険料÷保険期間を毎年の保険料に充当

一時払の保険料控除は支払った年のみである一方、全期前納保険料控除は毎年利用できる

途中で死亡した場合、一時払の保険料は返退されないのに対して、全期前納保険料は未経過保険料が返還される


■責任準備金と解約返戻金


保険会社は、契約者から受け取った保険料の純保険料部分について、将来の保険金の支払に備えて積み立ている。この積立金が所謂『責任準備金』と呼ばれる。

また、責任準備金は、契約の途中で保険を解約すると解約返戻金として契約者に戻されるが、その際には解約控除と呼ばれる手数料が差し引かれる。

■猶予期間と失効


契約を有効に継続させるためには、保険料を定められた期日(払込期月)までに支払う必要がありますが、支払が少し遅れたからといってたちまち効力を失う(失効する)わけではなく、一定の猶予期間が設けられている。この猶予期間の間は保障が継続することになる。

払込方法ごとの猶予期間は以下の通りである。

・月払:払込期月の翌月1日から末いまで

・半年払・年払:払込期月の翌月1日から翌々月の契約応当日まで

失効した契約は、失効後3年以内(商品によって期間は違う)であれば、保険会社の承諾を得た上で、失効期間中の保険料と延滞利息を支払うことにより元の状能に戻すことができる(復活)。

復活手続の際には、改めて健康状熊の告知を行うか、医師の診査を受けることが必要で、その結果によっては復活ができないこともある(失効)。

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