公告方法等に関する登記
・株式会社は、原則として貸借対照表を公告する必要があり、その公告方法は、原則として定款で定めた公告方法による。 (株式会社の計算書類の公告)
・株式会社は、貸借対照表の公告以外でも、株式の併合をする場合等においては、株主に対して公告をすることがあり(会社法181条2項 )、また、債権者保護手続をとる必要がある場合には、官報以外の方法で公告をすることもある(会社法449条3項参照)。
・株式会社が株主や債権者に対して公告する場合、ⅰ官報、ⅱ時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙、ⅲ電子公告のうちで、株式会社が定めた公告方法による(会社法939条1項)。
・会社の公告方法として、紙媒体である官報または日刊新聞紙を採用している株式会社は、貸借対照表等の公告も、原則として官報または日刊新聞紙に掲載すべきこととなる。この場合、貸借対照表の要旨で足りるとされている。
スペースが限られている官報や日刊新聞紙などの紙媒体に、大きな容量のある貸借対照表をすべて掲載することは現実的ではないからである。
また、貸借対照表等の公告だけを、紙媒体によるのではなく電磁的方法(インターネット)によって掲載することも認められている(会社法440条)。
会社法939条1項(会社の公告方法)
一 官報に掲載する方法
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三 電子公告
会社法440条(計算書類の公告)
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3 前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
会社公告方法は、必須の登記事項
・すべての株式会社は、会社の公告方法を登記する必要がある。この登記すべき公告方法は、定款で定めた公告方法が大原則である(会社法939条1項、会社法911条3項27号)。
・ただし、定款で公告方法を定めていない会社は、官報による公告方法が採用されるの(会社法939条4項、会社法911条3項27号)ので、広告方法としては官報が登記されることとなる。
・例えば、定款で定めた広告方法が『電子公告』である株式会社は、貸借対照表の内容である情報の提供を受けるために必要な事項のみを登記することはない(会社法施行規則220条2項参照)。
もともと『電子公告』が広告方法である企業が、貸借対照表等の広告のためだけに、広告方法を登記することは無意味だからである。
一方で、広告方法が『官報』又は『日刊新聞紙』である株式会社は、会社法440条3項の規定による措置(貸借対照表等の公告だけを電子公告にする措置)をとるときは、貸借対照表の内容である情報の提供を受けるために必要な事項(ウエプページのアドレス)を登記する必要がある(会社911条3項26号)。
なお、定款で定めた広告方法が『電子公告』である株式会社は、公告をする方法として、通常の電子公告のためのウエプページのアドレスとは別に貸借対照表等に係る情報の提供を受けるためのウェブページのアドレスを登記することができる(会社法施行規則222条2項)。
貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項 | https://www.bengo4.org/ |
公告をする方法 | 電子公告の方法により行う。 https://www.bengo4.org/ 貸借対照表の公告 https://www.bengo4.org/ |
会社法施行規則220条
一 法第九百十一条第三項第二十六号 法第四百四十条第三項の規定による措置
二 法第九百十一条第三項第二十八号イ 株式会社が行う電子公告
三 法第九百十二条第九号イ 合名会社が行う電子公告
四 法第九百十三条第十一号イ 合資会社が行う電子公告
五 法第九百十四条第十号イ 合同会社が行う電子公告
六 法第九百三十三条第二項第四号 法第八百十九条第三項に規定する措置
七 法第九百三十三条第二項第六号イ 外国会社が行う電子公告
2 法第九百十一条第三項第二十八号に規定する場合には、同号イに掲げる事項であって、決算公告(法第四百四十条第一項の規定による公告をいう。以下この項において同じ。)の内容である情報の提供を受けるためのものを、当該事項であって決算公告以外の公告の内容である情報の提供を受けるためのものと別に登記することができる。
会社法911条3項(株式会社の設立の登記)
二十五 第四百二十七条第一項の規定による非業務執行取締役等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め
二十六 第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
会社における公告方法の変更の登記
公告方法の変更の登記における登記事由
会社が公告方法を変更したときは、登記事由は「公告方法の変更」とし、会社法440条3項の貸借対照表に係る情報の広告のために、別途必要な事項を定めたときは、「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項の設定」とする。
公告方法の変更の登記における登記すべき事項
・会社が公告方法を変更した旨、変更後の公告方法及びその年月日を記載する。
なお、電子公告の方法とするときは、電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの(具体的には、ウェブページのアドレス)を登記しなけらばならない。
また、事故等の場合における予備的な公告方法の定めがあるときは(会社法939条3項後段)、その定めを登記しなければならない(会社法911条3項)。
・会社法440条3項の貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項を定めたときは、当該事項を設定した旨、ウェブページのアドレス及び年月日を記載する。
公告方法の変更の登記における登録免許税
3万円である(登免別表第一24(1)ツ)
公告方法の変更の登記における添付書類
〇株主総会議事録
公告方法の変更は、定款変更にあたるので、定款変更の決議がされた株主総会の議事録を添付する。
なお、会社法440条3項の措置をとることは定款で定める必要のある事項ではなく、また、会社法には、当該措置をとることの決定をどの機関がすべきかにいての規定もない。したがって、代表取締役等株式会社の業務執行機関が当該措置をとることの決定をすることができるものと解される。
しかし、会社法440条3項の措置をとることを株主総会もしくは取締役会の決議または取締役の過半数の一致で決定することは差し支えないと解されるので、その場合は、その決定を証する書面を添付することになろう。
〇代理人によるときは、委任状
商業登記法46条(添付書面の通則)
商業登記法18条(申請書の添付書面)
公告方法を電子公告に変更した場合の登記記録
電子公告を公告方法としたことによる変更の登記をしたときは、登記官は、職権で会社法911条3項27号に掲げられた事項(会社法440条3項の貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項)の登記を抹消する(商登規則71条)。
会社法911条3項(株式会社の設立の登記)
二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め