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不動産の譲渡時にかかる税金

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不動産譲渡所得の概要

土地や建物などの不動産を譲渡した際の譲渡所得は分離課税となりますので、他の所得と分離した上で所得税と住民税が課税されます。

また不動産の譲渡所得は、不動産の所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれ、税率が異なります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得を区別する際の、所有期間は不動産を譲渡した年の1月1日時点で判断します。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得とされ、税率は39%(所得税30%+住民税9%)となる。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得とされ、税率は20%(所得税15%+住民税5%)となる。


例えば、2014年6月に不動産を取得し、2019年8月に売却した場合、5年3か月の所有期間があるため、一見『長期譲渡所得』のように思われる。

しかし、売却(譲渡)した年の1月時点で考えると、所有期間は5年に以下のため、この場合『短期譲渡所得』に分類されます。

取得日は、原則として資産の引渡しを受けた日となりますが、契約の効力発生の日とすることもできます。

同様に、譲渡日は、原則として資産を引き渡した日となりますが、契約の効力発生の日とすることもできます。



不動産譲渡所得の計算

不動産の譲渡所得の計算は、『譲渡所得=譲渡による収入金額一(取得費+譲渡費用)』です。
※特別控除がある場合は、この金額から特別控除を差し引く

・譲渡による収入金額
譲渡による収入金額とは売却額のことです。

・取得費
取得費とは、譲渡した資産を購人した時にかかった費用(購人代金、仲介手数料、不動産取得税、登録免許税など)や、その後に要した設備費、改良費などから、減価償却費相当額を差し引いたものです。

取得費が不明な場合などは、譲渡による収入金額の5%を取得費とすることができます(概算取得費)。

また、相続した財産を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、相続税額の一部を取得費として加算できる制度(相続税額の取得費加算)があるため、この期間内に売却すると税金面では有利となる場合があります。

・譲渡費用
譲渡費用とは、資産の譲渡のための費用のことで、仲介手数料や印紙代、建物取壊し費用、立退き料などが含まれます。



居住用財産にかかる特例

不動産を売却した際に利益がでると、思いのほか税負担が大きくなる場合があります。

そのため、個人が居住用財産を譲渡した場合においては、税負担が重くなり過ぎないための配慮としていくつかの特例が設けられています。

また、経済状況によっては購入時より価格が大きく下落しているケースもあるが、その際にも税金面での優遇制度が設けられている。

譲渡益がある場合の特例

譲渡益がある場合の不動産譲渡にかかる税金の特例には以下の3つがあります。

     

  • 居住用財産の3,000万円特別控除
  •  

  • 居住用財産の軽減税率の特例
  •  

  • 特定の居住用財産の買換え特例

居住用財産の3,000万円特別控除

居住用財産である自宅やその敷地等を譲渡した場合は、譲渡所得金額の計算上3,000万円を控除することができます。つまり、譲渡所得が3,000万円までであれば、税金はかからないことになります。

この特例は、所有期間に関係なく利用することができますが、次にあげる要件を満たしている必要があります。

・居住用財産の譲渡であること
・前年、前々年にこの特別控除の適用を受けていないこと
・譲渡した年、前年、前々年に、居住用財産の買換え特例や、譲渡損失の繰越控除の特例等を受けていないこと
・譲渡した相手が配偶者や直系血族等の特別の間柄でないこと

居住用財産の軽減税率の特例

長期間所有した居住用財産を譲渡した場合には、譲渡所得が出たとしても通常より税負担が軽くなるように配慮された特例です。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合は、の3,000万円の特別控除後の金額に対して適用される税率が以下のように軽減されます。




また、本特例の適用には、以下の要件を満たす必要があります。

  • 譲渡した年の1月1日時点での所有期間が10年を超える居住用財産の譲渡であること
  • 前年、前々年にこの特別控除の滴用を受けていないこと
  • 譲渡した年、前年、前々年に、居住用財産の買換え特例や、譲渡損失の繰越控除等の特例の適用を受けていないこと
  • 譲渡した相手が配偶者や直系血族等の特別の間柄でないこと


特定の居住用財産の買換え特例

居住用財産を買換えた場合に、譲渡した居住用財産にかかる税負担が軽くなるように配慮された特例である。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が10年を超え、かつ居住期間が10年以上である居住用財産を譲渡し、一定期間内にこれに代わる居住用財産を取得した場合、買換えた金額に相当する部分の課税が繰延べられる。

譲渡価額が買換資産の価額以下場合(譲渡して得た金額より買換で取得した資産が高額の場合)、譲渡がなかったものとされ、全額が繰り延べられて課税されない。

譲渡価額が買換資産の価額を超える場合(譲渡して得た金額が、買換で取得した資産より高額の場合)、譲渡資産と買渙資産の差額についてのみ課税される(一部が繰り延べられる)。

『特定の居住用財産の買換え特例』は、『居住用財産の3,000万円特別控除』、『居住用財産の軽減税率の特例』との重複適用は受けられない。
つまり「3,000万円特別控除十軽減税率」を利用するか、「買換え特例」を利用するかは、どちらの方が有利なのかを考慮して選択する必要がある。

また、本特例の適用には、以下の要件を満たす必要がある。
・譲渡した年の1月1日時点での所有期間が10年を超え、かつ居住期間が10年以上である居住用財産の譲渡であること
・買換資産は原則として譲渡した年の前年から翌年までの3年間に取得すること
・譲渡した年の翌年12月31日(譲渡した年の翌年中に取得する場合は、取得した年の翌年12月31日)までに居住すること
・譲渡資産の譲渡対価の額が2億円以下であること
・買換資産の敷地面積が500㎡以下、建物の床面積が50㎡以上であるこ
・渡した相手がを偶者や直系血族等の特別の間柄でないこと





譲渡損がある場合


居住用財産の買換え等の損失の損益通算および繰越控除の特例

不動産の譲渡による譲渡損失は、原則として損益通算することができないが、居住用財産を買換えた場合で、譲渡した資産に損失が生じている場合は、例外的に損益通算が認められる特例である。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える居住用財産の買換えをして損失が生じた場合、一定の要件を満たせはその損失金額を損益通算することができる。


なお、損益通算しても控除しきれない損失がある場合は、翌年以後3年間にわたって繰越控除をすることも認められる。

また、本特例の適用には、以下の要件を満たす必要がある。
Ⅰ 譲渡資産:譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年超であり、平成23年12月31日までの譲渡である
Ⅱ 買換資産:譲渡した年の前年から翌年までの3年間に取得し、取得日の翌年の12月31日までに居住すること。繰越控除の適用を受ける年の年末に、返済期間10年以上の住宅借人金残高があること。
Ⅲ 繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,00万円以下の年のみ
Ⅳ 譲渡した相手が配偶者や直系血族等の特別の間柄でないこと

なお、住宅借入金等特別控除との併用は可能である。

●特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例


『居住用財産の買換え等の損失の損益通算および繰越控除の特例』は「買換え」の場合にのみ利用できるが、買換えをせず、単に譲渡をしただけでも損失が出ている場合には損益通算が利用できるというのが本特例である。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える居住用財産を譲渡して損失が生じた場合、一定の要件を満たせば買換えなくても一定の金額を損益通算することができる。損益通算しても控除しきれない損失がある場合は翌年以後3年間にわたって繰越控除が認められる。

また、本特例の適用には、以下の要件を満たす必要がある。・譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年超・譲渡契約の締結日の前日に、返済期間10年以上の住宅借入金残高がある・平成23年12月31日までの譲渡である・繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下の年のみ・譲渡した相手が配偶者や直系血族等の特別の間柄でないこと・特定居住用財産の譲渡損失の金額(損益通算の限度額)は、「居住用財産の譲渡損失の金額」と「譲渡した居住用財産に残っている住宅ローン残高一譲渡対価」のいずれか少ない

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