ニュースの要旨
- 「ヤフー株式会社」は、2019年10月1日付で当社の商号(社名)を「Zホールディングス株式会社」に変更
- 同時に同日付で「ヤフー株式会社」と「Zフィナンシャル株式会社」を会社分割により新設
- 新設された「ヤフー株式会社」と「Zフィナンシャル株式会社」は、「Zホールディングス株式会社」の100%子会社となる。
- 金融事業を統括する「Zフィナンシャル株式会社」を設立し、「Yahoo!ニュース」をはじめ「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」などの中核事業は、新設された「ヤフー株式会社」が担う。
- 表面上は、「Zホールディングス株式会社」を持ち株会社とし、金融事業を担う「Zフィナンシャル株式会社」を設立した格好になる。
- さらに2019年10月10日、金融事業を担う「Zフィナンシャル株式会社」とオンライン総合証券最大手の「SBIホールディングス株式会社」の業務提携が発表され、金融事業のさらなるテコ入れを図る模様。
電力会社の送配電事業分社化で学ぶ会社法会社分割の基本
ニュース要旨2015年6月に成立した改正電気事業法により、送配電部門全体を別会社化する「法的分離」は、2020年までに実施されることになり、これにより、送配電事業者は発電や小売事業を営むことを原則として禁じられる。 かつての電気事業は、地域
社名の変更は定款変更で行う
今回、「ヤフー株式会社」が「Zフィナンシャル株式会社」へ社名の変更を行ったわけですが、社名は会社法的には「商号」と呼ばれ、商号は会社の根本規則である「定款」に必ず記載しなければならないものです。
会社法入門2(定款って何?)
さて、前回に続いて会社の設立手続きについてお話ししていこうと思いますが、前回は発起設立と募集設立という二つの設立方法があるということをお話したと思います。簡単に復習してみましょう
発起設立:発起人が設立時発行株式の全てを引き受ける設
このように、定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項である「商号」を変更する場合は、定款を変更することによって行います。
定款の変更は、株主総会の決議によるとされており、決議要件は「株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の3分の2以上」の決議が必要とされる特別決議によって行うこととされております。
会社法466条
株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。
会社法309条2項
会社分割で金融会社「Zフィナンシャル株式会社」設立
会社分割は「ある会社の権利義務の全部又は一部を他の会社へ承継すること」であり、新設分割と吸収分割があります。
今回の事例は、「ヤフー株式会社」と「Zフィナンシャル株式会社」を新たに設立する新設分割で、分割対価として発行する株式のすべてを、親会社となる「Zホールディングス株式会社」が引き受けることで、完全親会社‐子会社の関係が成立しました。
ここでの親会社である「Zホールディングス株式会社」が持ち株会社となるグループ企業集団が新たに設立されたのです。
会社分割の手続き
新設分割は吸収分割と異なり、分割対象となったセクションを独立させ、新たに会社を設立するものであるため、分割元の会社である新設分割会社に関する手続きがメインとなります。
株式会社を新設する場合の新設分割計画の作成
1又は2以上の株式会社が新設分割をしようとする場合においては、新設分割計画を作成しなければならない。
新設分割契約の内容の事前開示
分割元の会社である新設分割株式会社は、新設分割計画を一定の期間、書面又は電子媒体により、新設分割株式会社の本店に備え置かなければなりません。
新設分割株式会社の株主及ひ債権者は、営業時間内いつでも上記の新設分割計画の内容書面等の閲覧を求め又は会社の定めた費用を払って、その謄抄本等の交付を請求することができます。
現実的には、会社分割等の組織再編の計画は、企業ホームページのプレスリリースで公開されるのが通常であり、わざわざ本店に備え置かなくてもホームページで誰でも閲覧可能な状態に置かれます。
会社法803条
一 新設合併消滅株式会社 新設合併契約
二 新設分割株式会社 新設分割計画
三 株式移転完全子会社 株式移転計画
3 消滅株式会社等の株主及び債権者(株式移転完全子会社にあっては、株主及び新株予約権者)は、消滅株式会社等に対して、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該消滅株式会社等の定めた費用を支払わなければならない。
一 第一項の書面の閲覧の請求
二 第一項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 第一項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 第一項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって消滅株式会社等の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
新設分割計画の承認
会社分割は株主の利害に重大な影響を与えるから、新設分割計画は新設分割株式会社の株主総会の特別決議による承認を受けなければならない。
ただし、分割対象となる資産が分割会社の総資産の1/5以下の場合は、新設分割の分割会社においては、一定の場合を除き、株主総会の承認を要しないとされています。
会社分割でも分割する資産が割合的に小さい場合は、最高意思決定機関である株主総会の決議は不要とのことです。
今回の、「ヤフー株式会社」と「Zフィナンシャル株式会社」を新たに設立する新設分割では、2019年開催の株主総会で承認の決議を得ております。
会社法804条
株式の買取請求権等
分割元である分割株式会社の株主にには株式の買取請求権が認められています。会社分割に反対する株主は、会社に対して自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。
一方、権利行使によって株式の交付を受けられる新株予約権の買取請求についても、一定の条件で認められます。新株予約権者は、将来の株主となりえる権利ですので、株主と同様の権利が認められています。
電力会社の送配電事業分社化で学ぶ会社法会社分割の基本
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会社法806条
一 第八百四条第二項に規定する場合
二 第八百五条に規定する場合
2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
一 第八百四条第一項の株主総会(新設合併等をするために種類株主総会の決議を要する場合にあっては、当該種類株主総会を含む。)に先立って当該新設合併等に反対する旨を当該消滅株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該新設合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
3 消滅株式会社等は、第八百四条第一項の株主総会の決議の日から二週間以内に、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設分割会社又は株式移転完全子会社(以下この節において「消滅会社等」という。)及び設立会社の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第一項各号に掲げる場合は、この限りでない。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、第三項の規定による通知又は前項の公告をした日から二十日以内に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
6 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、消滅株式会社等に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。
7 株式買取請求をした株主は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
8 新設合併等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。
9 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。
会社法808条
一 新設合併 第七百五十三条第一項第十号又は第十一号に掲げる事項についての定めが第二百三十六条第一項第八号の条件(同号イに関するものに限る。)に合致する新株予約権以外の新株予約権
二 新設分割(新設分割設立会社が株式会社である場合に限る。)
次に掲げる新株予約権のうち、第七百六十三条第一項第十号又は第十一号に掲げる事項についての定めが第二百三十六条第一項第八号の条件(同号ハに関するものに限る。)に合致する新株予約権以外の新株予約権
イ 新設分割計画新株予約権
ロ 新設分割計画新株予約権以外の新株予約権であって、新設分割をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に新設分割設立株式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの
三 株式移転 次に掲げる新株予約権のうち、第七百七十三条第一項第九号又は第十号に掲げる事項についての定めが第二百三十六条第一項第八号の条件(同号ホに関するものに限る。)に合致する新株予約権以外の新株予約権
イ 株式移転計画新株予約権
ロ 株式移転計画新株予約権以外の新株予約権であって、株式移転をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式移転設立完全親会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの
2 新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者は、前項の規定による請求(以下この目において「新株予約権買取請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債を買い取ることを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。
3 次の各号に掲げる消滅株式会社等は、第八百四条第一項の株主総会の決議の日(同条第二項に規定する場合にあっては同項の総株主の同意を得た日、第八百五条に規定する場合にあっては新設分割計画の作成の日)から二週間以内に、当該各号に定める新株予約権の新株予約権者に対し、新設合併等をする旨並びに他の消滅会社等及び設立会社の商号及び住所を通知しなければならない。
一 新設合併消滅株式会社 全部の新株予約権
二 新設分割設立会社が株式会社である場合における新設分割株式会社 次に掲げる新株予約権
イ 新設分割計画新株予約権
ロ 新設分割計画新株予約権以外の新株予約権であって、新設分割をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に新設分割設立株
式会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの
三 株式移転完全子会社 次に掲げる新株予約権
イ 株式移転計画新株予約権
ロ 株式移転計画新株予約権以外の新株予約権であって、株式移転をする場合において当該新株予約権の新株予約権者に株式移転設立完
全親会社の新株予約権を交付することとする旨の定めがあるもの
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 新株予約権買取請求は、第三項の規定による通知又は前項の公告をした日から二十日以内に、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の内容及び数を明らかにしてしなければならない。
6 新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求をしようとするときは、当該新株予約権の新株予約権者は、消滅株式会社等に対し、その新株予約権証券を提出しなければならない。ただし、当該新株予約権証券について非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをした者については、この限りでない。
7 新株予約権付社債券が発行されている新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求をしようとするときは、当該新株予約権の新株予約権者は、消滅株式会社等に対し、その新株予約権付社債券を提出しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債券について非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをした者については、この限りでない。
8 新株予約権買取請求をした新株予約権者は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その新株予約権買取請求を撤回することができる。
9 新設合併等を中止したときは、新株予約権買取請求は、その効力を失う。
10 第二百六十条の規定は、新株予約権買取請求に係る新株予約権については、適用しない。
会社分割における債権者保護手続
会社分割をするにあたって、会社に債権を持つ者は重大な利害関係を有しています。最悪の場合、債権が回収できなくなることすらあり得ます。
そのため、会社分割などの組織再編を行う場合、会社債権者にお知らせすることにより、異議を述べる機会を与えなければなりません。
具体的には、会社債権者に対して、以下の点について官報をもって公告し、かつ、知れている債権者に対しては各別にこれを催告しなければなりません。
- 会社分割をする旨
- 会社分割当時会社の商号及ひ住所
- 会社分割当時会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
- 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
ただし例外として、会社が、官報のほか定款で定めた日刊新聞紙又は電子公告により公告するときは、知れている債権者に対する各別の催告を要しないとされています。
会社法では、組織再編などの会社債権者に重大な利害が及ぶ場合、確実に会社債権者に情報が行きわたるように制度設計されいてます。
会社法810条
一 新設合併をする場合 新設合併消滅株式会社の債権者
二 新設分割をする場合 新設分割後新設分割株式会社に対して債務の履行(当該債務の保証人として新設分割設立会社と連帯して負担する保証債務の履行を含む。)を請求することができない新設分割株式会社の債権者(第七百六十三条第一項第十二号又は第七百六十五条第一項第八号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、新設分割株式会社の債権者)
三 株式移転計画新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合 当該新株予約権付社債についての社債権者
2 前項の規定により消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 新設合併等をする旨
二 他の消滅会社等及び設立会社の商号及び住所
三 消滅株式会社等の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3 前項の規定にかかわらず、消滅株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告(新設分割をする場合における不法行為によって生じた新設分割株式会社の債務の債権者に対するものを除く。)は、することを要しない。
4 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該新設合併等について承認をしたものとみなす。
5 債権者が第二項第四号の期間内に異議を述べたときは、消滅株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該新設合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
会社分割したら登記も行う
会社は法務局に会社の基本的な事項を届出し、それらの情報は基本的に誰でも閲覧できるように公開されてます。これらは「登記」と呼ばれ、法務局で管理している商業登記簿に会社の基本的な事項が記録・公開されております。
株式会社が新設分割を行い、設立会社が株式会社であるときは、分割会社につき変更の登記、設立会社につき設立の登記をしなければなりません。
なお、会社分割の登記は、債権者保護手続きを含め登記以外の会社分割手続が終了したときに、初めて行うことができ、本店所在地において行うことになります。
登記を完了することにより、会社分割は正式に効力を生じます。
今回の事例では、分割元の会社である「Zホールディング株式会社」は変更の登記を行い、分割して設立された「Zフィナンシャル株式会社」と「ヤフー株式会社」は、設立の登記をすることになります。
会社法924条
一 新設分割をする会社が株式会社のみである場合 次に掲げる日のいずれか遅い日
イ 第八百五条に規定する場合以外の場合には、第八百四条第一項の株主総会の決議の日
ロ 新設分割をするために種類株主総会の決議を要するときは、当該決議の日
ハ 第八百五条に規定する場合以外の場合には、第八百六条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告をした日から二十日を経過した日
ニ 第八百八条第三項の規定による通知を受けるべき新株予約権者があるときは、同項の規定による通知又は同条第四項の公告をした日から二十日を経過した日
ホ 第八百十条の規定による手続をしなければならないときは、当該手続が終了した日
ヘ 新設分割をする株式会社が定めた日(二以上の株式会社が共同して新設分割をする場合にあっては、当該二以上の新設分割をする株式会社が合意により定めた日)
二 新設分割をする会社が合同会社のみである場合 次に掲げる日のいずれか遅い日
イ 第八百十三条第一項の総社員の同意を得た日(同項ただし書の場合にあっては、定款の定めによる手続を終了した日)
ロ 第八百十三条第二項において準用する第八百十条の規定による手続をしなければならないときは、当該手続が終了した日
ハ 新設分割をする合同会社が定めた日(二以上の合同会社が共同して新設分割をする場合にあっては、当該二以上の新設分割をする合同会社が合意により定めた日)
三 新設分割をする会社が株式会社及び合同会社である場合 前二号に定める日のいずれか遅い日
2 一又は二以上の株式会社又は合同会社が新設分割をする場合において、新設分割により設立する会社が持分会社であるときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める日から二週間以内に、その本店の所在地において、新設分割をする会社については変更の登記をし、新設分割により設立する会社については設立の登記をしなければならない。
一 新設分割をする会社が株式会社のみである場合 次に掲げる日のいずれか遅い日
イ 第八百五条に規定する場合以外の場合には、第八百四条第一項の株主総会の決議の日
ロ 新設分割をするために種類株主総会の決議を要するときは、当該決議の日
ハ 第八百五条に規定する場合以外の場合には、第八百六条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告をした日から二十日を経過した日
ニ 第八百十条の規定による手続をしなければならないときは、当該手続が終了した日
ホ 新設分割をする株式会社が定めた日(二以上の株式会社が共同して新設分割をする場合にあっては、当該二以上の新設分割をする株式会社が合意により定めた日)
二 新設分割をする会社が合同会社のみである場合 次に掲げる日のいずれか遅い日
イ 第八百十三条第一項の総社員の同意を得た日(同項ただし書の場合にあっては、定款の定めによる手続を終了した日)
ロ 第八百十三条第二項において準用する第八百十条の規定による手続をしなければならないときは、当該手続が終了した日
ハ 新設分割をする合同会社が定めた日(二以上の合同会社が共同して新設分割をする場合にあっては、当該二以上の新設分割をする合同会社が合意により定めた日)
三 新設分割をする会社が株式会社及び合同会社である場合 前二号に定める日のいずれか遅い日
新設分割の事後開示
分割元である新設分割株式会社及び、分割先である新設分割設立株式会社は、新設分割設立会社の成立の日後遅滞なく、会社分割内容を記載又は記録した書面又は電子媒体を作成し、新設分割設立会社の成立の日から6か月間本店に備え置かなければなりません。
また、これらの書面又は電子媒体は、新設分割株式会社及び新設分割設立株式会社の株主、会社債権者その他の利害関係人の閲覧又は交付請求等の対象となります。
会社法811条
一 新設分割株式会社 新設分割により新設分割設立会社が承継した新設分割株式会社の権利義務その他の新設分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録
二 株式移転完全子会社 株式移転により株式移転設立完全親会社が取得した株式移転完全子会社の株式の数その他の株式移転に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録
2 新設分割株式会社又は株式移転完全子会社は、新設分割設立会社又は株式移転設立完全親会社の成立の日から六箇月間、前項各号の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
3 新設分割株式会社の株主、債権者その他の利害関係人は、新設分割株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該新設分割株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 前項の書面の閲覧の請求
二 前項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって新設分割株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
会社法815条
2 新設分割設立株式会社(一又は二以上の合同会社のみが新設分割をする場合における当該新設分割設立株式会社に限る。)は、その成立の日後遅滞なく、新設分割合同会社と共同して、新設分割により新設分割設立株式会社が承継した新設分割合同会社の権利義務その他の新設分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。
3 次の各号に掲げる設立株式会社は、その成立の日から6箇月間、当該各号に定めるものをその本店に備え置かなければならない。
一 新設合併設立株式会社 第1項の書面又は電磁的記録及び新設合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録
二 新設分割設立株式会社 前項又は第811条第1項第1号の書面又は電磁的記録
三 株式移転設立完全親会社 第811条第1項第2号の書面又は電磁的記録
4 新設合併設立株式会社の株主及び債権者は、新設合併設立株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第2号又は第4号に掲げる請求をするには、当該新設合併設立株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 前項第1号の書面の閲覧の請求
二 前項第1号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 前項第1号の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前項第1号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって新設合併設立株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
5 前項の規定は、新設分割設立株式会社について準用する。この場合において、同項中「株主及び債権者」とあるのは「株主、債権者その他の利害関係人」と、同項各号中「前項第1号」とあるのは「前項第2号」と読み替えるものとする。
会社分割の無効の訴え
会社分割が行われたものの、当該会社分割の手続きに瑕疵がある場合に、事後的に当該会社分割の効力を争うには、会社分割無効の訴えを提起することになります。
会社分割の無効は、訴えをもってのみ主張することができ、無効の主張期間は、分割の効力を生じた日から6か月内に限られます。
会社分割無効の訴えの無効原因
- 吸収分割契約を実質的に見れば締結していないと評価される場合や新設分割契約を作成していないと評価される場合
- 分割契約や分割計画において定めるべき法定の事項につき定めていない場合
- 株主総会の瑕疵、債権者保護手続の不存在
会社分割の無効を主張できる者
会社分割の無効は誰でも主張できるものではありません。
訴える側である原告となることができるのは以下の者です。
- 分割元である分割会社と分割によって新設される会社のそれぞれの株主、取締役、執行役、監査役、清算人であった者
- 現在それぞれの会社の株主、取締役、執行役、監査役、清算人、破産管財人である者
- 分割について承認をしなかった債権者
訴えられる側の被告は、分割元である分割会社と分割先である設立会社の必ず双方でなければなりません。
このように原告又は被告が必ずセットでなければならない場合を、固有必要的共同訴訟といいます。
会社法828条
九 会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から6箇月以内
十 会社の新設分割 新設分割の効力が生じた日から6箇月以内
2 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。
九 前項第9号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者
十 前項第10号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者
会社法834条
九 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割契約をした会社
十 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社及び新設分割により設立する会社
会社分割無効の訴えが容認されると…
会社分割を無効とする判決が確定すると、判決の効力が第三者にも及ぶ対世効が生じます。
一方で、判決が遡って効力を及ぼす遡及効はありません。
従って、吸収分割の無効が確定した場合には、分割後に承継会社に帰属した財産は各当事会社の共有、債務は連帯債務となります。
新設分割の無効が確定した場合には設立会社は解散するが、分割後に設立会社に帰属した財産・債務は分割会社に帰属することになり、分割元の会社が複数である共同新設分割の場合には、財産は各分割会社の共有・債務は連帯債務となります。
会社法838条
会社法839条
会社法843条
一 会社の吸収合併 吸収合併後存続する会社
二 会社の新設合併 新設合併により設立する会社
三 会社の吸収分割 吸収分割をする会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社
四 会社の新設分割 新設分割により設立する会社
2 前項に規定する場合には、同項各号に掲げる行為の効力が生じた日後に当該各号に定める会社が取得した財産は、当該行為をした会社の共有に属する。ただし、同項第四号に掲げる行為を一の会社がした場合には、同号に定める会社が取得した財産は、当該行為をした一の会社に属する。
3 第一項及び前項本文に規定する場合には、各会社の第一項の債務の負担部分及び前項本文の財産の共有持分は、各会社の協議によって定める。
4 各会社の第一項の債務の負担部分又は第二項本文の財産の共有持分について、前項の協議が調わないときは、裁判所は、各会社の申立てにより、第一項各号に掲げる行為の効力が生じた時における各会社の財産の額その他一切の事情を考慮して、これを定める。