「そもそも保険とは何か?」という観点から保険制度の基本的な仕組みや考え方を解説する。
■そもそも保険とは何か?
保険は相互扶助の考えの基成り立っている。
ライフプラン(人生設計)を立てる際には「何の問題もなく健康に生活をおくる」ことを前提とするのが基本である。
不可抗力によるリスクは完全に避けることはできないが、このような場合に発生する経済的な損失には予め備えることが可能である。
これらのリスクは、自分に起こる可能性は低くとも、一定の割合で誰かに起こりえるものであるとも言える。
この相互扶助を実現するための土台となる統計的な原理が、大数の法則と収支相当の原則である。
■大数の法則
大数の法則とは、ひとつひとつの出来事の発生には偶然の要素が大きいとしても、数多くの経験を集めると一定の法則が得られるというものである。
例えば、サイコロを1度振ったとき「1から6のどの目がでるのか」は偶然であるが、サイコロを振る回数を増やしていくと、それぞれの日が出る確率は徐々に6分の1に近づいていく。
それと同じように、「人が病気や事故にあって入院する確率」や「若くして死亡する確率」「自動車事故を起こす確率」なども、過去の統計から計算することが可能になり、これが保険の制度設計の土台となっている。
生命保険の死亡保障においては、男女別、年齢別の死亡率をまとめた経験生命表である「生保標準生命表」が利用されている。
■収支相当の原則
収支相当の原則とは、収入の合計と支出の合計を同じにするという原則のことである。
保険においては、ひとりの人が支払う保険料と受け取る保険金額の収支は人によってバラバラで「多くの保険料を支払いながら全く保険金を受け取らない人」もいれは「少ししか保険料を支払っていないのに多くの保険金を受け取る人」もいるはずである。
なお、実際には保険会社を運営する経費や、預かった保険料の運用益なども考慮するため、保険会社から見た場合「受け取る保険料+その運用益」と「支払う保険金十保険会社の運営経費」が等しくなるように計算されている。
■保険に入るメリット
この大数の法則、収支相当の原則に基づく相互扶助の仕組みによって、保険を契約した時点から必要な保障を得ることができるのである。
■社会保険と任意保険
保険には、国が運営し要件にあてはまる人が強制加人となる社会保険と、民間の保険会社が運営し、各人の意思で加人する任意保険がある。
社会保険には、公的年金や公的医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険があるが、これらの保障内容を把握した上で、不足する分を任意保険で賄うという考え方が基本となる。
任意保険には「人の生死」を主な対象とし、定額払いが原則となる生命保険と、「偶然なる事故による損失の補填」を主な対象とし、実損払いが原則となる損害保険、そして以前は第三分野保険といわれていた、「病気やケガ、介護等」を主な対象とする傷害疾病定額保険(定額払い)、傷害疾病損害保険(実損払い)がある。
■共済と少額短期保険
共済とは、特定のグループに所属する構成員だけを対象とした保険制度のことで、原則として営利を目的としていないものを指す。
共済には、根拠法のある認可共済と根拠法のない無認可共済があったが、平成18年の法律改正により無認可共済が認められなくなったため、既存の無認可共済は①保険会社になる、②少額短期保険業者になる、③廃業する、のいすれかを選択することになった。
少額短期保険業者とは、保険業のうち少額かつ短期の保険のみを取り扱うことができる会社で、取り扱うことができる商品は以下の範囲内と定められている。
疾病による死亡・重度障害
疾病・傷害による入院給付金等
傷害による死亡・重度障害
損害保険
また、取り扱える商品の保険期間の上限は、生命保険・医療保険は1年、損害保険が2年となっており、会社は最低資本金1,000万円以上、年間収受保険料が50億円以下であることが要件となっている。
なお、根拠法のある主な共済として、JA共済、全労災、都道府県民共済、CO・OP共済などがある。